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前回はドライバの出力抵抗について解説しました。 今回はこの抵抗値を用いて、ダンピング抵抗の最適値を計算する方法について述べます。

そもそも 『ダンピング抵抗』 とは何でしょうか。
ダンピング=dampingとは、振動を減衰させるという意味です。

話は飛びますが、車は路面からの衝撃を、スプリング(ばね)で吸収しています。 ところが、スプリングだけだと、振動してしまうので、この振動を抑制し収束するために、ショックアブソーバーという装置が設けられます。 このショックアブソーバーのことをダンパ(damper)といいます。 このイメージで、パルス波形が振動しているのを抑制し収束させる部品としてダンパを回路に入れる、その部品が抵抗なので、ダンピング抵抗と名付けられました。 誰がいつ名付けたかは分かりませんが、厳密にいうと振動を抑制するのではなくて、ドライバの出力抵抗と線路の特性インピーダンスとの違いをある程度一致させることが主な働きなので、マッチング抵抗と呼んだほうが正しいかもしれません。 でも、誰もこの抵抗のことをマッチング抵抗という人はいないので、今後ともダンピング抵抗ということとします。

余談ですが、投げ売りのdumpingは別の単語です。ダンピング抵抗の値は、22Ωとか33Ωがよく用いられます。 「何となく」とか「先輩がこの値を用いていたから」という理由ではないでしょうか。 または、ゼロオーム抵抗を「とりあえず」入れて、試作基板が出来てから、実験室でそのゼロオーム抵抗を外して、適当な、まず22Ω程度を入れて、波形が「何となく」収まっていればその値を部品表に書き込む、そんなことで決められる可哀相な抵抗ではありませんか?

部品表も大切な設計図の一つです。 設計図に書き込む数値には全て意味があります。 「とりあえず」とか「何となく」決められた抵抗は、可哀相だと思います。 部下や後輩から、この抵抗の値はどのように決めたのか問われたときに、きちんと説明できるようにしておきたいものです。ダンピング抵抗の値は、波形の乱れをなるべく小さく収めるように選ぶはずです。 図1に示す立ち上がり波形を例にとります。 立ち下がりも同様に考えて下さい。

図1  立ち上がり時のオーバシュートとその跳ね返り



波形乱れとは、オーバシュートとその跳ね返りが主なものです。 オーバシュートは、よほど大きくない限り、気にしなくてもよいと考えます。 あまり大きいとノイズ源となったりしますが、致命的な問題ではないので、オーバシュートの跳ね返りについて考えます。 この跳ね返りが深く(大きく)なると、最終的には波形割れを生じます。 ロー側のスレッショールドを超える場合ですが、他のノイズとの重畳も考慮すれば、なるべく跳ね返りを小さく選ぶほうが望ましいでしょう。 跳ね返りが、フル振幅から25%下がる、すなわち、フル振幅の75%にまで下がったときが最低振幅マージンと考えます。 このレベルは、フル振幅(100%)とスレッショールド電圧のtyp値50%との中間の値です。 何があってもこのレベルより下がってはまずいという意味で最低振幅マージンと名付けます。 このときに、ドライバの出力抵抗は、線路の特性インピーダンスの1/3になっています。( 脚注1)

線路の特性インピーダンスを50Ωとすると、ドライバの出力抵抗は50÷3=17Ωです。 前回のコラムを参照いただくと、このドライバの駆動能力は16mAとなります。 70Ωの線路の場合には、70÷3=23Ωで12mAドライバに相当します。 これらのドライバをダンピング抵抗なしでは決して使用してはならないと考えて下さい。実際には、もっと駆動能力を下げる、すなわち、ダンピング抵抗を追加する必要があります。 図2は、オーバシュート量からダンピング抵抗を決める図です。

図2  ドライバ駆動能力とオーバシュートおよび跳ね返り電圧



どの程度のオーバシュート量が適切かは設計思想にもよりますが、フル振幅の10%か20%が適当でしょう。 20%のオーバシュートの場合、x=1.5なので、50Ωの線路では、50÷1.5=33Ω、すなわち、8mAドライバとなります。 これより駆動能力の大きなドライバの場合にはダンピング抵抗を追加します。 図3には、50Ωの線路に対するダンピング抵抗の値を示します。 同図のaがオーバシュート量です。 20%以外に設定する場合に、各自計算してみて下さい。

図3  オーバシュート量とダンピング抵抗 Z0=50Ω



図4には70Ωの線路の場合を示します。 50Ωの線路の場合よりも大きなダンピング抵抗の値が必要になることが分かります。 20%のオーバシュートのときに、その跳ね返り電圧がいくらになるか文末の答えを見ずに計算してみて下さい。

図4  オーバシュート量とダンピング抵抗 Z0=70Ω




脚注1)
遠端にはCMOSのレシーバがあるのみで、何も終端しない普通のCMOS伝送の場合、ドライバの出力抵抗と線路の特性インピーダンスとの比をxとすると、オーバシュートの跳ね返りによる電圧は、ドライバの振幅の 4x/(1+x)^2 倍になります。 この式を0.75とおいてxを求めると、x=3が得られます。

答え
x=1.5を脚注1の式に代入すると、4×1.5/2.5^2=0.96、すなわちフル振幅の4%しか低下しません。



 

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